ステロイド剤には炎症を強力に抑える働きがありますが、その一方で「長期間使用による副作用」という問題があります。人の体では副腎皮質ホルモンが常に分泌されていますが、そこに同じ働きを持つステロイド剤を投与すると、体内のホルモンバランスが崩れてしまいます。
生体内で分泌される副腎皮質ホルモンは、炎症反応を抑える働きの他に、脳下垂体に作用して「副腎皮質刺激ホルモン」の分泌を低下させるなどの働きがあり、ステロイド剤も同様の作用を持っています。そのため、ステロイド剤を使用すると、副腎皮質刺激ホルモンが減少します。副腎皮質刺激ホルモンは副腎皮質にホルモンを作るように指令をする物質で、この分泌が低下すると、副腎皮質ホルモンの分泌も低下します。
ステロイド剤を長期連用すると、副腎皮質刺激ホルモンが欠損し続けることになり、その結果、副腎皮質の機能が低下します。そして、機能低下に伴って減少した副腎皮質ホルモンを補うために、更にステロイド剤を使うという悪循環ができ益々ホルモンバランスが崩れていき、様々な障害が体に現れます。
長期間、使用されたステロイド剤は、ある程度体内に蓄積されることが知られています。従って、ステロイド剤の使用を中止した場合、副作用に悩まされることがあります。また、副腎皮質の機能は低下して、萎縮した状態になってしまうため、ステロイド剤をやめても、すぐにホルモン分泌がうまくできません。そのため急激なホルモン低下状態になってしまい、それまでに抑えられてきた炎症や免疫反応が一気にふきだしてしまいます。これを「離脱」といって、症状としては激しい痛みや痒みをはじめ、血管から血漿成分がしみだして、むくみや、体液をしみ出してしまうなどがあります。この離脱症状は、体内に蓄積されたステロイド剤が再度はき出されるといったん治まったようにみえることがあります。しかし、その蓄積されたものもなくなると、また離脱症状がふきだします。そのため、2回以上の離脱を繰り返すこともあります。
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