中医学(東洋医学)では、治療と同じまたはそれ以上に、病気の予防が重要視されています。生活習慣の乱れ(食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足、過労、不規則な生活など)が続くと、体の自然治癒力が落ちて、「未病」の状態になりやすいといわれています。未病にならないためには、日ごろの予防が必要です。このことを「養生」といい、食事に関するものを「食養生」といっています。
中医学的な発想では、特に目立った症状が無くても、「元気がない・活力が出ない」これらはもう「病気」の段階に入っていると考えます。身体に問題がなければ、元気が出ない・活力が出ない、ということはあり得ないからです。これぞまさしく「未病(まだ病気ではないがいずれ病気に移行するかもしれない)状態」を意味します。「未病状態」は 現代医学的検査では身体の異常を数値で出すことの出来ない状態でもあります。
「日常の食事こそが良薬」という考え方です。この言葉は中国の薬食同源という思想から日本でつくられた言葉だそうです。健康な体をつくり、自然治癒力をつけるためには、食べ物は欠かせません。食べ物には、体の不調を治す薬効があると考えられていて、この薬効を利用すれば、なんとなく調子が悪い、疲れがとれないといった未病の状態を改善し、病気の予防をすることができます。このように、毎日の食事に気をつけることで、健康を維持することを医食同源と呼びます。また、中医学では、薬と食物とは一体のものという解釈があり「薬食同源」と呼ばれています。古代からの長い生活の中で、味覚的に食べやすいものを日常的な食物としてとらえ、身体に変化をきたす偏性の大きいものを薬物として利用するようになったと考えられます。
身とは体、土は環境を意味し、身土不二とは人間の健康状態とその環境とは、切っても切れない関係にあるという意味です。人間は一定の体温を維持するために、寒い地域に住んでいる人と、暑い地域の人では、発熱量や発汗量が異なります。寒い地域で育つ食べ物は、体を温める作用があり、反対に暑い地域の食べ物には体を冷やす作用があるので、寒い地域の人が、暑い地域でとれた特産品ばかりを食べていると、体を冷やすことになります。このように、その土地のものは、そこに住む人を補う力を持っているといわれています。
食材をまるごと全部食べることをいいます。たとえば、植物は根がなくても葉がなくても育ちません。植物のすべての部分が、重要な役割をして生きています。ふだん捨てているような野菜の皮や根、魚の内臓にも栄養素がたくさん含まれており、そのすべてをいただこうというのが、一物全食です。他に中医学の視点からは、たとえばミカンの場合には、実の果汁は胃腸の熱をとり、利尿作用もあります。皮の部分は干すと気を巡らせる働きがあり、中薬では陳皮と呼ばれ、理気薬として用いられます。
人間は、地上に存在する他の動物や植物と同じように、自然界の構成要因の一つであり、自然の大きな循環の中で生かされている、とする考え方です。宇宙自然の運行に従うことが健康維持に欠かせないということです。
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